ヒトラーとUFO 


 目次 
 まえがき・・・・・・・・・・01
 宇宙船とヒトラー・・・・・・02
 ヒトラーのベルリン脱出・・・03
 ハーケンクロイツと敬礼・・・04
 食糧の調達・・・・・・・・・05
 アイヒマンの南米潜伏・・・・06
 ヒトラーの死・・・・・・・・07



 01 まえがき  

 前代未聞のユダヤ人大量虐殺を続けた総統アドルフ・ヒトラー!! 狂気は如何にして形成されたのか? 
ヒトラーはベルリン陥落直前地下壕で服毒自殺したとか、ソ連軍に焼かれたとか連合軍に焼かれたとか、写真付きで出版された書物もあったが事実は如何なのか。
 ドイツの総統、アドルフ・ヒトラーその傍には常にエヴァ・ブラウンが居た。
ベルリン陥落直前、地下壕の二人は消息を絶ち、如何に生きたのか? また如何に身を処したのか? 是非知りたい処である。

 

  
 02 宇宙船とヒトラー 
 第二次世界大戦も終り三年が経過した僕の幼少期三歳の時のことである。
僕は宇宙船(UFO)の中で時々怖い小父さんを見ていたが名前は知らなかった。ただ怖い小父さんが居ると思っていた。その小父さんは宇宙船の中で我がもの顔の怖い顔でよく人を殴っていた。
 明日はまた宇宙船に乗らなければならない。「宇宙船へ乗るのは嫌だ 怖い小父さんが宇宙船に居る」と祖母に訴えた。
 普段、祖母は子供の話に耳を傾ける人ではない、僕は宇宙船の中の事を祖母に話し、この時ばかりは僕の話を真剣に聞いていた。
 祖母は「もっと詳しく」と何度も聞き直し僕の断片の話を寄せ集めヒトラーだと言っていた。
「ばぁちゃんも一緒に乗るから宇宙船に頼んで」と僕に言う。祖母の頼みとはいえ宇宙船で頼むのは三歳の僕だって嫌だった。
 翌日、乗せられた宇宙船で頼む事ができず困ってもじもじしながら立ち 「ばぁちゃんが宇宙船へ乗りたいって」宇宙船の人は僕の言おうとする事が予め分かっていたのだ。「もう後ろにいるよ」と宇宙船の人は云う。後ろには既に祖母がバツ悪そうに立ち、祖母より少し離れた後ろに母がいる。
「近くへ来て」と呼んでも母は宇宙船の中なのに祖母に気兼ねし少し動いただけだった。

 小学生高学年の頃には宇宙船をUFOと言うようになった。僕は雑誌が好きでドイツ総統、ヒトラーの記述や写真を見て顔も名前も一致し『ヒットラー』と言い知っていた。
イスラエルのモサドやアイヒマンも雑誌では採り上げていた。
 その頃、UFOの中で体検査を受けていた処、地球人の一人が部屋に入って来た。ヒトラー総統ではないか? 雑誌の写真と変らない顔、ヒトラー見ながら「ドイツの総統ヒトラーが居る! 死んだ筈なのに如何して此処に居るのか?」と思っていたがそのまま過ごしてしまった。
 中学生の時、またUFOの中でヒトラー総統を見て間違いないと思い念押しでUFOの人達に「ヒトラーではないのか」と訊いた処「そうだ」とUFOの人が云う。
 イスラエルのモサドがヒトラーを探していることを雑誌でよく見ていたから「早く はやく ヒトラー総統はここにいるよ」と体検査を受けながら思っていた。しかし、宇宙船の人たちの反応を感じ『自分が危険だ!』と思考を停止した。
  
  その後、僕の少年期にはヒトラーと話す機会が多くなっていた。ヒトラーはベルリン陥落直前UFOに保護され、その後、UFOの中ではいつも孤独であり戦争経験の無い僕に戦争の事で文句を言わないからとUFOの中でよく話しかけてきたのだ。

 ヒトラー総統は帽子が好きで何時も被っていたが破れて使えなくなり将校の帽子を被り威厳を保とうとしていた。矢張り気に入らないらしく「この帽子は私のではない」と怒り「他に帽子がない」と不満を言いながら被っていた。
 僕の幼年期から見ていたヒトラー総統の軍服はパリッとしており中学生の頃までは時々総統の軍服も着替えていた。
 何処に軍服があったのか、どうやって持ってきて着替える事が出来たのか?不思議に思うほど威厳を保ち〝ドイツの総統〟という面目は保っていた。
 しかし、その後は着替えもなく少しずつ軍服は劣化しボロボロになっても気にする様子もなくボロ軍服を常着していた。

 その頃、UFOグレイからヒトラーと第二次世界大戦の因果を聞かされた。
UFOの惑星はユダヤ人が重力を解明すると分かっていたが、誰が重力を解明するのか個人の特定はできず確実な方法を模索し最終的にユダヤ人の重力解明を未然に防ぐ方法とし『ユダヤ人排斥は最重要課題である』とした。
 地球で重力が解明されれば〝UFO〟といわれる宇宙船が建造され周辺科学も発達し、同等の文明を許せばUFOの惑星は地球に対する優位が揺らいでしまう。
 UFO惑星の大統領は地球に重力を解明させてはならないとユダヤ人排除の決定をし、最前線のUFOに戦争勃発の誘導を命令したのである。
UFO惑星の地球に対する優位は惑星の安定と存続に繋がっているからである。
 UFOグレイは「我々の惑星がヒトラーを選び第二次世界大戦を勃発させた UFO惑星が地球科学の重力解明を封印する為に必要な戦争であった」と云うのだ。
 
 ヒトラーはUFOから選ばれ地球で自分の意志ではない大戦争をしなければならなかった。戦争の本当の理由はヒトラーしか知らず第二次世界大戦の表面だけが歩いた地球である。
 ヒトラーに戦争を仕掛ける白羽の矢! 戦争をさせる為にUFOがヒトラーをコントロールし10年で戦争準備をしろと命令した。
ヒトラーはUFOからの命令に逆らえず「戦争準備に必死であった」と言っていた。

 UFOは「世界を相手にする戦争になる」とヒトラーに伝えている。
ヒトラー総統は「絶対勝てない」そう思いながらも憂鬱の中で命令通り動くしかない。UFOの惑星は何れドイツが負けると分かっている戦争をヒトラーに命じたのだ。UFOへの反抗はヒトラー総統であろうと出来る訳もなく敗戦する大戦争へ突き進む。
 
 ヒトラー総統は「ポーランドを追われてドイツへ来た」と言い、ポーランドを恨んでいた。ヒトラー総統がUFOの命令に合わせた思惑「侵攻理由は何でもよかった」と言う。
 UFOグレイに「戦争は敗戦する」と知らされたヒトラー総統、負ける戦争はしたくないがUFOの命令に背けば殺害される。ヒトラー総統の本意でない侵攻であった。
  ヒトラー総統は「戦線を拡大すれば危険だ それ以上戦火を拡大させるな」の命令を戦線は間違いとしていた。
「戦線が勝手に戦火を拡げ 総統の私が侵攻を止める事ができなかった 戦線では総統に良い報告をしたいと勝手に戦火を拡げた」と険しい表情になった。
僕は『そうではない UFOが戦線の将兵をコントロールし戦火を拡げさせた』と思っていた。
 僕はヒトラーに「狂気のような演説をしていたのは如何してなのか」と聞いた。
ヒトラー総統は「負ける戦争をする事になった 自暴自棄になり どうにでもなれという気持ちになっていた」と悔しそうに話した。
 

 ヒトラー総統の心配とは裏腹にドイツの勝ち戦が続き、戦争に勝てると思うようになり世界総統の野望が芽生えた。
 UFOが命令した戦争、負けるというのは間違いとし勝ち進む事で世界総統の野望が確立しUFOの命令、ユダヤ人虐殺も〝止むなし〟とした。
 UFOは虐殺数を把握していたが尚、ヒトラー総統に〝ユダヤ人虐殺数の報告〟を課せた。総統も知られていると分っていながら水増し報告をしていた。
UFOからその都度云われる命令数に届かない虐殺数、毎日が命令数の半分も達成できず未達成の数が増すだけであった。
 ヒトラー総統は「UFOから命令数より少ないと責められ如何にして命令数を達成させるか殺害方法を毎日考えた」と話した。
「銃殺は弾が勿体無い ガス室を造ったが非効率であった」と言い、険しい表情で「虐殺は止めようと何度も思った 虐殺を止めればUFOは代わりの者を選び虐殺を続け 虐殺を止めた自分はUFOに殺害される」と思い虐殺を続けた。

 UFOは三国同盟を結ばせ戦争の長期化を狙う。ヒトラー総統は「日本は世界の隅にある国だ 価値は無い 同盟したくなかったがUFOの命令だから同盟したのだ」と言う。
 
  
 勝ち戦が続いたドイツも次第に負け戦が多くなっていた。
ヒトラー総統は降伏したいとUFOに何度も願い出たがUFOは地球に対する惑星の優位を守る目的の方針は変えない。
 
ユダヤの血が流れている』と祖父から聞いていたヒトラー、虐殺の最後に自分がユダヤ人としてUFOに殺害されるだろうと思いながら今を行動する総統。
この事をユダヤの血を受け継ぐヒトラーは複雑そうに話していた。
 UFOの命令で止むを得ず始めた戦争も敗戦になれば戦犯処刑だ。何れにしてもヒトラー総統には死が待っている。
 UFOの惑星に支配され、総統であるが故に本心とは別に戦争をし、ユダヤ人を排除しなければならない〝ヒトラー〟なのだ。
『敗戦になるまでユダヤ人虐殺を続けろ』の命令はUFO惑星から出ている。地球で指揮するUFOグレイが勝手に変更する事はできない。

 ソ連軍に続き連合軍がベルリンへ入りドイツ帝国の敗戦はせまり、ヒトラーの指揮命令系統は機能せず傍観するのみ。
UFOは支配下としたヒトラーで地球の重力解明を封印する事に近いレベルまで達していた。

 
 03 ヒトラー総統のベルリン脱出
 UFOの中、帰りの時間待ちで手持ち無沙汰でいた時の事「ヒトラー総統のベルリン脱出記録を観させてやる」と思いがけない事をUFOグレイが云い観させてくれた。
 空間に画面を拡げるようなグレイの動作と同時にホログラムのような画面が現れた。 
 ヒトラー総統とエヴァ・ブラウンが地下豪の奥から上がってきた場面、そこで止めグレイは次回に観せると云い終らせてしまった。
貴重且つ歴史的な記録、これからが観たい処であるが帰る時間になってしまった。
今、観たかったが帰れと云われれば仕方ない、次回はヒトラー総統のベルリン脱出の一部始終を観る事が出来るのだからと、次にUFOへ乗る日を楽しみに帰った。

 次のUFOへ乗る夜が来てUFOでの用件が済めばベルリン脱出の続きが観たい。前回は時間が無いと観られなかった場面、早く観たいがUFOグレイ達は忙しそうだ。
観せるという約束だ。早く観たいと焦ってしまうが時間はある・・・やっとグレイが来て約束通り観させてくれた。
 ヒトラー総統はエヴァ・ブラウンと地下壕の奥から上ってきた。
此処までは前回観ている。  地下壕一階、日本式の引き戸の付いた一室へ二人が様子を見て入ってくる。
 ソ連軍はベルリンに侵攻した直後、撤収作戦で先頭侵攻実績と戦力温存作戦をとった。後にヒトラーは「スターリンとソ連は昔も今も汚い奴だ」と兵力温存を罵っていた。
  
  
 連合軍の地上部隊がベルリンで防衛網を突破している。ベルリン防衛隊の指揮命令系は機能していない。
 ベルリンの首都防衛網が破壊されているとの報告にヒトラー総統は信じる事ができない。ベルリンに敵軍隊が入るなど絶対ないと思っていた。
陥落間近で死を覚悟したものの何の決断も出来ず絶望と自信が交互に襲う。
 「ベルリンにソ連軍が再侵攻した」と報告を受けたヒトラー総統は『ベルリンが陥落する!  脱出の残り時間は少ない!』と追い詰められる。 
 
 ベルリン陥落は避けられない、ヒトラー総統とエヴァ・ブラウンは全く会話をしない。 沈黙が続くドイツ帝国の地下壕の一室でエヴァ・ブラウンは二人で死ぬと思っていた。
しかし、ヒトラー総統には生と死の選択がある。
 エヴァ・ブラウンは敗戦が色濃くなる頃から「安全な場所がある」とヒトラー総統から聞き半信半疑の聞き流し状態でUFOなど知る由もない。
 ヒトラー総統は『エヴァ・ブラウンとの脱出を実現したい』UFOと意思疎通をする為、その都度部屋の隅へ行き上を向きながらUFOに二人の脱出を願い出ている。
UFOは「脱出の許可は以前から一人だけだ 二人の脱出は許さない」と返している。 一人の脱出が決断できないヒトラー総統、脱出を躊躇い時間が過ぎる。
 総統に「一緒に連れて行って」と脱出を感じたエヴァ・ブラウンが何度も懇願する。
 上を見て言葉ではない遣り取りをエヴァ・ブラウンは以前も見た。不思議な行動を時々見ていても総統を笑う事などできない、今まで一緒に過ごした不可解な体験である。
 二人の脱出を再三願い出るヒトラー総統にUFOは「最後通告だ 二人というなら そこに残れ」と伝えてきた。
 最後通告をしたと自慢げにUFOグレイが話すのには違和感があったが地球人にいつまでも伝える〝ヒトラー総統 ベルリン脱出〟の語り種になっている。
 エヴァ・ブラウンは「一緒に連れて行って」と再三懇願するも無言を続ける総統に不信感を募らせる。ベルリン脱出はヒトラー総統だけに許されたUFO惑星の方針なのだ。

 ヒトラー総統の無言の決断『残された道は一つしかない』はエヴァ・ブラウンに伝わり信頼の絆は突如絶望に変ってしまった。
 ベルリン陥落間近の地下壕でヒトラー総統はエヴァ・ブラウンを見ないようにし自害を願いながら口には出せない。
 脱出は二時間残すだけになり二人の仲が終焉となる地下壕の空虚、更に時間が経過する。
〝沈黙〟が続きヒトラー総統はエヴァ・ブラウンの死を望み、エヴァ・ブラウンは自害を覚悟する最悪内容の意志の疎通であった。
 ヒトラー総統はベルリンを脱出したい、時間は止まらず壁の掛け時計を何回も見る。

  

 
 小型拳銃を頭に当てたエヴァ・ブラウン、ヒトラーの顔が一瞬期待を込めた表情になったがエヴァ・ブラウンは自害を躊躇っている。
 総統は脱出の時間が気になり焦り、未だかまだかとエヴァ・ブラウンの引き金を待った。 用事があると部屋を出るヒトラー総統、エヴァ・ブラウンを一人にして自害を促す行動だ。
 総統が単独で脱出する方法はエヴァ・ブラウンの〝死〟以外ないのである。様子を見に一度戻り部屋の中を見る。
 エヴァ・ブラウンはヒトラー総統が見に来た事に気付かない、自殺を願う総統は再び離れてその時を待った。
 絶望のエヴァ・ブラウンはうな垂れて、右手を机に付き左手に拳銃を持ち、左耳上の頭部に当て二秒後に引き金を引く。衝撃で頭が一瞬弾けるように揺れ倒れた。
 映画やテレビではないUFOの記録、これがエヴァ・ブラウンの拳銃自殺!・・衝撃だ!
 横たわるエヴァ・ブラウンはヒトラー総統の脱出時間を残した。栄光のドイツベルリン地下壕、日本式引戸のある部屋がエヴァ・ブラウンの終焉の場所となり左利きである事も記録に残した。
 ヒトラー総統はエヴァ・ブラウンの引き金を引く瞬間を見る事なく戻り、遺体に近付き自害したエヴァ・ブラウンの遺体を見ながら足で動かし死亡を確認している。
 死を願い、死を選ばせたヒトラー総統。
『地下壕には壕を焼く為 ジェリカンにガソリンが用意してある』と迷いながらエヴァ・ブラウンを見ている。
 しかし、エヴァ・ブラウンの遺体をガソリンで焼く事はできなかった。この〝情〟は戦場の掟破りであり後々の後悔に繋がるとは思いもしなかった。

 ヒトラー総統は地上への階段を上がる。ベルリン広場に連合軍が入り激しい戦闘だ。
これが最後、総統の〝私のベルリン〟脱出が完了すれば二度とベルリンへは戻れない。
 UFOが上空で戦場のベルリンを見ている。UFOは連合軍に静止コントロールをかけベルリン広場の動きが一斉に止まった。静止した連合軍の中をヒトラー総統はベルリン大地の感触を味わいながらゆっくり歩く。
 ベルリン広場は武装した敵兵ばかり、目の前の敵兵を殴りたい総統は睨みつけ我慢しながら擦り抜けUFOの真下へ向かう。
 敵将兵の静止はUFOのコントロールによるもの、殴ればコントロールが解けてしまう。この時、既にヒトラー総統は〝コントロールの解き方〟を知り得ていたのだ。
「早足で来い」とUFOグレイがきつく伝えている。ヒトラーのベルリン感触は残り僅かになり広場の硝煙が薄れる。
『惑星の命令だ 必ず保護される』そう思いながらヒトラー総統の安心しきった行動である。UFOに乗れば再びベルリンには戻る事はない、UFOはベルリン広場の隅の上空で静止しヒトラー総統の保護と戦闘の一連を細かく記録することを任務としていた。
 UFOの真下、ベルリン広場からヒトラー総統の足が離れUFOへの脱出は成功し、止められていた連合軍が動く。
「ヒトラーを見た!」と叫ぶ兵士がいる。

 ヒトラーは「ベルリン脱出は見せたくない また観させた」と言い怒りながら「私のベルリンだ 創ったのは私だ」と自慢している。
「ベルリンから足が離れた瞬間は何とも説明できない複雑な気持ちだ」と真剣に話し、その気持ちは重苦しく伝わってきて足元から分かるような感覚になってきた。
 僕は愛人と言わず「秘書のエヴァ・ブラウンとは結婚していたのではないか」と聞いた処、ヒトラーは直ぐ意味が理解できない様子だ。
 いつも『エヴァ』と呼び負け戦と混乱で秘書であった事を忘れていたのか? 間を置いているヒトラー・・・・・
「祭壇は急場しのぎで正式な物ではない 位の低い神父が来て結婚式を始めたが重要な戦況報告が入り途中で退席したのだから 結婚はしていない」と主張した。
 僕は『神父が来たのなら どのような形式でも 退席しても 結婚は成立している』と思いながら、結婚の成立を強く否定するヒトラーには言えなかった。

 そのエヴァ・ブラウンは自害で終った訳でなく『死』の尊厳はズタズタにされていたのだ。エヴァ・ブラウンは何人もの兵隊に死姦され、まだ兵隊が並んでいた。報告を受けた将校が来て「止めろ」の命令まで死姦が続いた。
 遺体が誰なのか判断する事なく、この後の死姦を止めさせる為の強制手段として連合軍のジェリカンを持って来させガソリンを掛け焼いたのだ。


 エヴァ・ブラウンが集団死姦された事をヒトラーはUFOの記録で知っていた。
「地下壕にはジェリカンが用意され壕を焼くガソリンは保管していたが
エヴァの遺体は焼けない 戦場の情が掟に破壊された」と、焼けなかった〝情〟を後悔し壁を蹴飛ばして悔しがり結婚を否定したのだ。
 UFO惑星の支配下であったヒトラーは地球歴史を創ったものの、最愛の絆で結ばれていたエヴァ・ブラウンの尊厳を護る事はできなかった。

 
 
 04 
ハーケンクロイツ卐と敬礼 
 
ドイツ軍旗にある逆鉤十字卐を少年期の僕は疑問を感じ何れは聞こうと思いながらも機会はなかった。逆鉤十字卐はヒトラーの誇りであり面子を潰さないように気を付けなければならずヒトラーの機嫌の良い時を見計らい聞いた。 
 
   
 「ドイツ軍旗にある逆鉤十字卐は 仏教の卍の印から採ったのか?」そう聞けばヒトラーは急に「ハーケンクロイツ卐だ」と語気荒く威圧的に言い換えた。

 不機嫌になっても仕方ない、言いかけたのだからと続けて「仏教卍と同じではないのか」と語気強く言えば自負心が強い栄光のドイツ帝国総統の険しい形相になり何処か『敗戦さえしなければ』と積った悔しさや怒りを感じる。
「東洋では卍といえば威厳がある」とご機嫌直しの僕の言葉にヒトラーは頷いた。
 「偶然に同じ鉤十字卐になったから角度を考慮し採用した 偶然も仏教の卍と異なって向きが違う卐だ」とヒトラーは説明する。
「軍旗には裏表あるから仏教卍と同じだ」と言っても怒らなかったヒトラー総統。
「絶対に卍を真似して旗にした」の追い打ち言葉にもヒトラーの反論は遅い弱気になっている。
 「逆鉤十字卐に角度が付いた軍旗は兵隊の進軍する様子に似ている」と、また機嫌直しに言えば考え方は同じで「西洋に鉤十字を組み込む紋章がある それから採った」と説明し直した。
 ヒトラーは急に「ナチスの敬礼はUFOの敬礼を模擬した 敬礼に威厳を持たせる為 丁度よかった」と言い、話を逸らした。
 ナチスの敬礼方法は以前から興味ある処で何れ聞こうと思っていた。ヒトラーから先に説明したのは逆鉤十字卐を真似と捉えられたくなくて話を逸らしたのだ。
 
 

 

 ヒトラーは戦後何年経ってもUFOの中で総統の面子を保ちたいようだ。
 ヒトラーは「日本の無条件降伏が気に入らない」と怒るので「降伏はドイツの方が先にした」と、ヒトラーに反論した。
 ヒトラーは僕が知らないと思ったようだが少年期には理屈や面子は強くなっている。
 ドイツの総統だったとはいえUFOの中では皆が注目し負ける事はできない。
「ムッソリーニは役に立つ奴だった」ヒトラーは続けて言ったので「最初に降伏したのはイタリアではないか」と反論した。

 「日本はアメリカ戦艦のミズーリで降伏調印した」と言えばヒトラーは知っていた。
軍艦上での調印を低く見て「ドイツは違う」と、関与さえできなかった降伏調印に変なプライドを持っていた。
『ヒトラー自身UFOに保護され 隠れていたではないか』と思いながら黙っていた。
 ヒトラーは「降伏は自分がしたのではない 誰が調印したのか知らない」と言う。
「今 分からないから調べれば直ぐに分かる」と返事をしたがその場限りの話になった。
 ヒトラーは逆鉤十字卐に執着心があり「ハーケンクロイツ卐は絶対に使わせない」と空威張りし 「名称もナチスは絶対使わせない」と言い栄光が忘れられないのだ。
「ナチス党は今あるよ」と言った処、ヒトラーは「それは良いのだ」と矛盾する。
【ドイツは一時期ナチス党を認めたがハーケンクロイツ卐と共に改めて禁止となった】

 ヒトラーは「ベルリン首都防衛隊は世界でも最強だった ドイツ軍のエリートが最新鋭の武器を持ち皆がなりたがる」と言う。
「ドイツでは親衛隊が一番ではないか」と聞けばヒトラーは「親衛隊には文句ばかり言ったから皆が嫌がっていた 首都防衛隊が一番だ」と言う。
 ベルリンの首都防衛隊が世界最強である筈がない『井の中の蛙』だと思い誰が言ったか聞いた処、ヒトラーは「首都防衛隊の報告があった」と言い、首都防衛網は早々に破られたのに未だ自慢し疑う事を回避して栄光の時代を語りたいのだ。
 総統の前で良い顔したい、褒められたい、敗戦の色濃い時の無責任な首都防衛隊だ。
こんな軍隊では負けるのは当たり前と思い「簡単にベルリン防衛網は破られた」と言えばヒトラーは腕組みをして黙って怒りを抑え込んでいる。
ベルリンはドイツの最強部隊が守り外国の軍隊に侵される事の無い絶対安全な聖域だと思っていたのだ。
 ヒトラーに全身の怒りが現れ総統の面子を保てなくなり顔色が真っ赤になって早足で去る後ろ姿は怒りの絵のようであった。
 その様子を見た日本の戦線経験者は僕に「よく言ったな」と笑いながら満足そうに、更に「戦争に行った者とヒトラーは話しをしない」とその方は言う。
 ドイツの元軍人は「何であんな戦争をした」とヒトラーを罵倒し、ヒトラーは戦争の事で文句を言う元軍人達とは話したくないのだ。 
 ヒトラーは「UFOの中で元軍人は敬礼をしない今も総統だ」と怒っていた。

  それからもUFOの中で孤独なヒトラーは戦争経験のない僕に好んで話しかけた。
ヒトラーと僕は孫のように年齢は離れていたが話す時は違和感もなかった。
ヒトラーとは話をする機会が多くありユダヤ人の生体実験について聞いてみた。

   
「人間は生きたまま実験され 何にも比較できない苦痛だ」
「生体実験は知らなかった 総統と言え全ては把握できない 敗戦後に生体実験を知らされた」と僕に顔を近付けて言う総統の怖い顔は僕に信じ込ませようとし、話を聞きながら受けた感触は当初から絶対知っていたと感じた。
 ヒトラーは「ドイツの生体実験より UFOはもっと酷い事をしている」と言い訳した。
『UFOはもっと酷い事をしている』とはアメリカのトップシークレットで下記の内容がある。
 
 UFOは毎年、人間幼児二万人以上をアメリカとロシアから連れ去りUFOの母船にて潰し、養分のみ抽出し惑星へ送っている。
 UFOにコントロールされた幼児たちは恐怖も消され、潰し機の前で整然と並び前の児たちが潰し機に入る処を見ながら自分が潰される順番を待っている。
 日本人の僕たちは三歳で幼児の列に並ばされたが「その子たちは目的が違う」と、他のグレイが潰し機に入る二番目からになった僕たち外した)
 このヒトラーの言う『UFOはもっと酷い事をしている』は『令和』になっても行われており今後も地球が続く限り行われる。

 ベルリンの壁がある現状を教えたつもりがヒトラーは知っていた。
総統が悲しがると思ったが「それは良い」と口数少なく、それ以上は聞けない雰囲気になりヒトラーは黙ったままだ。「ベルリンの壁は良い」と言うこの事もヒトラーの考え方の理由は聞けなかった。
        【ベルリンの壁の崩壊はヒトラーが没して13年後の事である】 

 気弱のヒトラーに「戦争でドイツは一千万人が死に国の為ではない」と言えば考えて直ぐに返事は出てこない「復興している」と苦しい言い訳をした。
「戦争やユダヤ人虐殺はUFOからの命令であったと 何故言い訳しないのか」と聞いた処、「UFOに保護されている立場では UFOグレイや惑星大統領の悪口は言えない」と言い、気を遣う普通の人間になっている。
 ヒトラーはドイツが復興している事を自分もできたと空見栄を張り、置かれた立場もあるが言い訳と義理を考え、矢張り処どころで普通の人間に戻りつつあった。
 また、戦争責任を感じている素振りは全く見せず敗戦の悔しさだけが時々表に出る。


 05 
食糧の調達 
 ヒトラーは「食糧を探しに行く」と言い出した。
食糧はUFOが供給している筈と思い「UFOが調達してくれるのではないか」と言えばヒトラーは不機嫌になり「自分で探せと言われた」という。
「UFOが食糧を探す場所まで行って降ろしてくれるのだから良いではないか」とご機嫌直しに言えば何を考えているのか黙っている。
 UFOの惑星には〝食する文化〟はなく純粋な養分のみ摂取する高度な文化である。
食糧が無ければ生きる事のできない人間ヒトラーに威厳はなく、ホテルの裏に出された残飯容器を開け食糧を見繕い当日の一回限りの糧にしている。
「残飯はホテルが一番美味いからお前も食べろ」と、僕に促しているが捨てられた残飯を僕は食べる事ができない、しかも日常毎回食事はしている。
 
みすぼらしい姿に目を背けたくなるが止めろと言えない、ヒトラーはいつも空腹なのだ。
 同じ事を小学生高学年の頃に見た事があり、唖然と見ていた僕に取るなと睨みつけながらホテルの残飯をガツガツ食べていた。
UFOから家に帰りヒトラーと残飯の話を母にした。「絶対食べるな」きつい口調の母、僕だって恥ずかしいから残飯など食べる訳がない。
 ヒトラーをUFOで見る度、今日は何処のホテルの残飯を食べたのか? 悪い事を考えていると思いながら一時期そんな目で見ていた。
 生存する限り何年も食糧事情の変わらないヒトラーは残飯だけが安定した食糧であり生きる術なのだ。  
 
 戦後の経済も成長していた頃、UFOからヒトラーにベルリンへ降りる許可が出て
〝私のベルリン〟へ何回か降りていた。
 僕はUFOグレイに「マスコミはベルリンでヒトラーを見たと報道していたから危険過ぎる 何故ベルリンに降ろすのか」と訊いた。
「食糧の調達だ」と答えただけで危険の事に触れる事はなかった。
 ヒトラーがもう二度と戻れないと思っていたベルリン、UFOはヒトラーを降ろしヒトラーは懐かしのベルリンで残飯をあさり食糧の調達をするのだ。
 ヒトラーに「ベルリンは危険があると思うから 降りない方が良いではないか 新聞にベルリンで見たヒトラーと載り 通報を呼びかけているから危険だ」と知らせたのに僕の言う事を聞き入れないヒトラーは「慣れているから 大丈夫だ」と言っている。
「日中もベルリンに降りた 危険は何もなかった」と変に自信があり「ベルリンに降りる一番安全な日がある」と言う。
「そんな日がありうるのか その日はいつなのか?」
「クリスマス・イヴの日が一番安全な日だ 仮装していると皆が思うからだ」
大胆に行動をするヒトラーをドイツ人は見間違いと思い通り過ぎてしまう。

 UFOから降りるベルリンはその都度復興され、ヒトラーは「復興は自分にしか出来ないと思っていた」と言い、復興自体に驚き復興させた人々に驚いていた。
 その後、ホテルは残飯を外の容器に出さなくなったがヒトラーは何処からか食糧調達をしていた。

 06 アイヒマン南米潜伏 
 南米に親戚が居ると言うヒトラー、UFOから許可され会いに行く予定である。
以前、一度は許可されたが理由を知らされないまま取り止めになっていた。
 僕とヒトラーはUFOグレイから個別に南米に居るアイヒマンは六ヶ月後には逮捕されると知らされていた。

 ヒトラーはアイヒマンに自分の存在を知らせたいと思っている。今直ぐ会わなければ逮捕され二度と会えなくなってしまう。
 その思いは可也強く、威厳の落ちた自分を知っていながらもヒトラーはアイヒマンに如何しても会いたいのである。
「南米のアイヒマンの所へお前も一緒に行かないか」
ヒトラーが僕を誘い、ヒトラーと行動したかった事と新聞や雑誌で何回も取り上げられていたアイヒマンを見たいと思っていた僕は直ぐ「一緒に行く」と答えた。
 ヒトラーは「親戚はアイヒマンだ」と言い出した。 以前「アドルフが付いてもアイヒマンは親戚ではない」と言っていたのに隠していたのだ。
 ヒトラー総統はアイヒマンを親衛隊長に抜擢していた。
戦争も負け戦が多くなり親衛隊からの暗殺を恐れたヒトラーは親戚から選び隊長をよく代えたと言う。
アイヒマンも代えようとしたが親戚が底をつき、次がなかなか見つからず代える事ができないまま親衛隊の隊長を遣らせたとの事だ。
 日本の戦線経験者が僕の処へ来て「戦争経験がないお前はいいな 戦場で生死を賭け苦労しただけだった」そう言われた時はその方に申し訳ないと思った。

 ヒトラーに南米は何処の国かと聞いても教えてくれず「当日に教える」と言う。
当日になり「南米の国はベネズエラだ」と言い、僕はベネズエラへは一度行って見たい国だと思っていたので願ったり叶ったりであった。
 UFOはヒトラーと僕をベネズエラの町の上空からアイヒマンが住む家の近くへ降ろし二人でアイヒマンの家まで歩いた。
アイヒマンはベネズエラ人の女房と家の作業場に一緒に居る。
せっかく会いに来て一人になる時はなく外からアイヒマンを見て帰る事にした。
ヒトラーは帰りがけに「UFOからアイヒマンに一人で居ろと伝えていた」と怒っていた。
 数日後、UFOグレイは同じ事をまた遣る事に不満を云いながらヒトラーと僕を再びアイヒマンの家の近くへ降ろした。
家の作業場にアイヒマンが一人でいる。今度は会えそうだ。
ヒトラーは「お前は外に居ろ」と言い作業場へ一人で入って行った。僕は仕方なく窓から中を覗き込んでいた。
 アイヒマンはヒトラー総統と気付かない、仕事の依頼と思っているようだ。
ヒトラーはアイヒマンに声もかけずに立っている。 アイヒマンは作業を続けている。
覗き込む僕を通行人が不審そうに見て通る。
待ちきれない、僕はそっと作業場へ入りヒトラーの傍らへ立った。
アイヒマンはヒトラーに似ているとは思っていたがヒトラー総統が来たと気付く由もない。
不満顔のヒトラーは威厳も無く戸惑っていた。
ヒトラーが話しかけても直ぐには気付かないアイヒマン。
 何回かヒトラーが話しかけてからアイヒマンは目を疑い「総統か!総統か!」と聞いている。ヒトラーが「そうだ」と短く言った途端、アイヒマンは直立不動で敬礼し総統はそれを受けてゆっくり敬礼をした。ナチスの敬礼を見たかったが通常の敬礼であった。
 総統だ! アイヒマンの顔が不安に変り混乱しながら 「如何してここが分かったのか」と聞く。
「以前から分かっていた」とヒトラーは言いそれ以上は答えなかった。
『安全な場所だと思い住んでいたのに この家が危険になってしまったのか?』アイヒマンは全く急に起こった現状を理解できない。
アイヒマンは混乱し「第三帝国を作ったのか? だから迎えに来たのか」と聞く。
よれよれの軍服を着て口数少ないヒトラー総統をアイヒマンは理解できない。
「総統はいつも立派な軍服を着ていたのに 何故なのだ?・・・」
ヒトラーもバツが悪い様子で何の説明もできず黙って内心の怒りを抑えている。
 沈黙の総統に困るアイヒマンは「変装なのか」と聞いてくる。変装か?と助け舟を出してきた。
「そうだ」と、ヒトラー総統は威厳を保とうとし更にまた「励ましに来た」と総統の迫力のない弱い言葉が情けない。
 ヒトラー総統の威厳の無さにアイヒマンは急に態度大きく傍らに僕が居るのを咎めだす。「安全だ」と言うヒトラー総統の言葉は弱い。
アイヒマンは総統に「第三帝国あれ程に作ると約束したではないか」と責めた。
 ヒトラー総統は答えに困り身の置き場もなく僕は助けたいが何もできず黙って見ていた。組織を持たない威厳の無い普通の人間ヒトラーが此処に居る。
 アイヒマンは所在を知られ困惑しながらイラつくようだ。 今の安住を捨て逃げなければ何れ捕まる。
存在を知らせる為に会いに行ったヒトラー総統の行動も威厳を保てずアイヒマンに不安を与えている。
 ヒトラーはアイヒマンに「どうやってベネズエラまで来たのか」と聞いた。
アイヒマンは「南米へは引き揚げ船に紛れて来た 船には簡単に乗
た 船の中でアイヒマンだと言う人に他の者が反論して助けてくれた」と話している。

 ベネズエラでは何回か住む地を変え此処に来た。アイヒマンは異国で生きる常套手段、言葉が不自由と思わせ無言には慣れていた。
 放浪の末、以前は夫が居たと言う独り身の女性の家に住み生活を始めた。
夫婦生活になり妻は口を閉ざしているだけと分かっていたが、その事に触れなかった。
 一緒に暮らす家で妻は夫がアイヒマンではないのか、そう思った事もあるが円満夫婦を壊したくなく打ち消していた。
 アイヒマンは言葉の壁は越えていたが用心して喋る事は危険とし、妻が話しかけてくる事を全て理解しながらも喋らなかった。
何回も妻に「喋ってごらん話せるから」と優しく言われ喋ろうとぎこちなく口を開いたアイヒマン、長年の間、口を閉ざしていた異国の言葉の喋り方が丁度良かったと言う。
 ヒトラーが「帰る」と言った途端アイヒマンはホッとした表情になった。
 作業場を出て僕はヒトラーの後に付きながら『中途半端な会い方になってしまった 何の価値も無かったマイナスだった』と思っていた。
 ヒトラーは「第三帝国はドイツだ」と作業場で言わず怒っていた。
『そんな事は誰だって知っている アイヒマンだって言葉に困り言っただけだ』と思いながら口には出せなかった。
ヒトラーの想いとアイヒマンの護身志向が擦れ違い意思の疎通ができなかったのである。

 UFOグレイは「ヒトラーとお前がアイヒマンの作業場から帰った一週間後 アイヒマンは以前から雇用話のあった鉄工所に勤め 心にゆとりを持つようになった」と云う。  勤め出し三ヶ月が経過した頃、モサドが行動を起こした。
 ユダヤ人モサドがCIAの組織の中で活動しモサドの任務を優先させアイヒマンが勤め帰りに自転車に乗っている処を急襲し拘束した。
予想外、モサドの行動は知らされなかったCIAは完全に出し抜かれてしまった。

 UFOで戦線経験者は「お前達がアイヒマンに会ったから逮捕された」と僕を責めたがUFOはアイヒマンが逮捕されると分かっていたからヒトラーに事前に会わせたのだ。
僕は徴兵され戦線で戦った兵士を尊敬していたから言い訳はしなかった。
 僕とヒトラー総統はアイヒマン逮捕の良し悪しは語りたくない、それに何の責任もないのだ。
後に、その戦線経験者、原真木廣氏に下諏訪町で会い事情を話し理解して戴いた。
 アイヒマン逮捕に付いてUFOグレイは「CIAはアイヒマンを偶然に見つけた訳ではない情報収集の中からCIAは三年間 アイヒマンらしいと見張っていた」と云う。
CIAはアイヒマンか確認できなかったが反応を見る為に接触し逃げるなと言っていたのだ。
アイヒマンもCIAが本物か判断できず逃げなかった。
 その後CIAは監視を止めたが三年経過した頃、CIAの中のモサドが監視を続けた。アイヒマンが勤め先へ自転車で通勤していた事が拘束し易かったと云う。
   
 逮捕後のアイヒマンは親衛隊が蘇りアイヒマンは威厳を取り戻した如くであった。
尋問や裁判受けるアイヒマンは逃亡時代とは別人のように復活し、完全に態度や言葉は帝国の親衛隊長のアイヒマンだ。
 国際法廷のアイヒマン、死刑は免れずユダヤ人虐殺に付いて憎い程の事を言っている。「一人の死は悲しいが 多くの死は統計上の数値に過ぎない」と発し「ヒトラー総統が励ましに来た」と証言した。
 UFOで僕達は〝神かくし〟の数も統計上の数値だと話し「ヒトラー総統が励ましに来た」とアイヒマンが言ったとの報道記事は世界が信用しないと話し合った。

 マスコミはアイヒマンを拘束し連れ出した国を最初はベネズエラと報道していたが何日か後にはアルゼンチンと訂正報道していた。
 UFOで「報道された国が変った」と訊いた処「国際的な諸事情で アメリカの要請にイスラエルが同調し 情報が交錯していたとして発表を変えた」とUFOグレイは説明した。 ベネズエラは其の頃、既に反米国家であり両国間問題を避ける為であったのだ。
 
                                         【世界は訂正報道を信用した】

 
 07 ヒトラー総統の死 
 ヒトラーは「著書『わが闘争』の大部分は口述の本だ ライターは口述すれば自分より上手く書いた」と感心しながらも「出版後に言わない事が書いてあった UFOの人達のことを〝至高の存在〟と書いてあった」と怒っている。
「〝至高の存在〟とは一度も言ってない〝崇高の存在〟と言った事を変えて書かれた」
ライターに激怒している総統も自分だけでは書けず確認もしていなかった。
「崇高は宗教的には尊い言葉だ」と、ヒトラーのご機嫌直しに言えばヒトラーは頷いていた。
「我が闘争は日本でも翻訳されて出版されている お前も読め」とヒトラーから言われ購入した。
A6判の小さ目の本で上巻と下巻から成り少し厚め、小さな文字がぎっしり書いてある。二冊で60万文字以上もある小さな文字は読みづらい!

  
 第二次世界大戦後30年経過した頃、UFO惑星はユダヤ人への重力解明阻止は未完結と解り目的達成の為に第三次世界大戦を画策している。
UFO惑星は再び〝戦争する操り人形〟に成る者を選び第三次世界大戦を勃発させ中東起爆に三ヶ月で終ると云うのだ。
 戦争は人間を狂わせ野獣の如くの第三次世界大戦が勃発し、再びユダヤ民族の迫害が始まる。エジプトは中東の盟主を狙い挙兵し数の中国は軍勢一億を挙兵する。
危機の中、優柔不断の日本は参戦の決断ができないまま大戦は終り、その優柔不断の日本は戦争に加担せず地球人として〝良〟である。

 生き残るユダヤ人は世界に僅か20万人となり大戦後ユダヤ人は世界から保護されるもユダヤの民に申し訳ない。
 ヒトラーは「もう嫌だ 俺はやらない」と言い「何で俺に第二次世界大戦を遣らしたんだ」と戦争を命令されたことに可成り憤慨していた。

 UFOグレイは「お前ならヒトラーのようにしても良い」と云う。僕の困惑を余所に人選は既に始まっているのだ。
 UFOでヒトラーを最近見かけない、UFOグレイに聞いても他に居ると云うだけである。
所在など気にしていない様子でUFOは沢山あるという返事をされてしまった。

 ヒトラーを長い間見る事もなく気にもしなくなったある日の事、UFOグレイの仕事を手伝っている太った奴が何回も部屋へ出入りしている。
 僕は検査台に寝かされ気になるその太った奴を何回も目で追い、それを気にしたグレイが「今の奴は誰か分かるか」と聞いたので「知らないと」と答えると、グレイは「ヒトラーだ」と教えたのである。
 ヒトラーを見て分からなかったなんて僕の驚きは半端ではない! 会わなかった10年位の間に見違えるように太っていた。
 部屋に来てはサッと出て行ってしまい何か変だと気になっていた。その人に話しかけようとしたが多忙な振りして行ってしまう。
 僕を知っている仕種に見え、避けているように見えた。その人間がヒトラーとは全く考えも思いもしなかった。 ヒトラーはぼろ軍服を諦め板前の着るような白衣を着ていた。

 それから僕はヒトラーと再び交流を持ちUFOの中では問題は起らなかったが・・・ヒトラーは都内のレンターカーのマイクロバスを試乗したいと借りて暴走するなど危険な運転でキズだらけにして返却し逃げてしまった。
 「岡谷市の車屋ラーメンの店主に似ている」と言った処、UFOから降りその店主に兄だからと強引にラーメンバスのキーを取り上げ、諏訪湖畔道路を暴走し店主と同じように上諏訪の湖畔駐車場でラーメンを売っていた。
 UFOで「食べに来い」と言われ食べに行ったが不味くて食べられる味ではなかった。
この事で車屋ラーメンの店主は信用がガタ落ちになり客も減ったと怒っていた。
 UFOグレイは僕に「お前が注意しないからお前の責任だ」と云い、今後もヒトラーは僕を困らせる事を起すだろうと思いヒトラーとは距離を保つ事にした。
  
 
 その後、何回かUFOに乗った夏の夜、UFOグレイからヒトラーの訃報を聞いた。「ヒトラーが死んだよ」と云われ内心の穏やかさはすっ飛んでしまった。
薬品にヒトラーを浸けたと云うので「ホルマリン使って保存したのか」と訊いた。
「地球のような粗悪な薬品は使っていない」とグレイは云う。
「遺体を見せてほしい」と頼めば「母船に在るから駄目だ」と返事をされてしまった。
見せるなと指示が出ているからなのか母船に行けば見る事が出来るではないか。
この僕に遺体を見せない訳はない、しつこく頼んだ後に聞いた理由で今回は諦めた。
「母船とは距離が二日ある」と時間が無い理由を云った。
 僕の心の中が空虚になり全身の力が抜け悲しくて涙を流しながらUFOから帰ってきた。内臓が飛んで行ったようにショックだったヒトラーの死。
史上最悪の戦犯とは言え交流を持ち、何れ死ぬだろう等とは考えもしなかった。
 UFOはドイツの敗戦間近からヒトラーを30年余り保護し続けた。
亡くなったヒトラー総統に一兵卒の軍服を着せたと聞いたが『そんな事は嘘だ 総統には当然立派な軍服を着せたに決まっている』と勝手に想像していた。

 その後、UFOに乗りグレイは「母船が近くに来ている ヒトラーの遺体を見せるから合掌して来い」と云い、直ぐ小型UFOは移動して母船に入った。
 母船に保存されているヒトラー総統の遺体が哀れではないか、くすぶれた軍服を着て透明容器に薬品漬けで立っている。
余りにも粗末な扱いに遺体に合掌する事を忘れていた。総統に一兵卒と同じ軍服を着せ威厳も何もない状態だ。
 これが亡くなった総統ヒトラーなのか、UFOが総統の面子を踏みにじっている。 
UFO惑星が利用した地球の人間を何故粗末に扱うのか? 歴史上最悪の戦犯とは地球上の事でありUFO惑星から支配され命令通りの大戦争を起こしたのにヒトラー総統に立派な軍服を着せたらどうかそれが僕の価値観だ。
 将校の帽子や軍服でも良い、きっと総統が望んでいる筈、たまり兼ね「立派な軍服を探し出し着せてやる事はできないか」とグレイに頼んだ。
「何処にも無い」と少し語気荒くきつい返事が返って来た。
「UFOの力があればオーダーで作らせる事はできないか? 作らせて記憶を消して持ってくれば」と訴えた。
しかし、グレイは「駄目だ」と云いその後は無視をする。
 戦後30年以上も経っているのだから総統の軍服は何処にも無いのは仕方ないが・・。

 UFOは惑星の目的の為、ヒトラーを選び嫌がる戦争や大虐殺をさせ惑星の最前線に位置させて於きながら死後の扱いに僕は不満だ。
「ヒトラーの脳は特別に他へ浸けてあるから見るか」と云われ「見たくない」と断った。標本に成っているのは仕方ない、ヒトラーの望みでなくても。
  ヒトラーが亡くなり今までのヒトラーとのことが走馬灯のように流れてきた。

ヒトラーが僕の悪口を言っていたと聞き、その事をヒトラーに問えばバツ悪そうに無視した以後、僕の悪口は言わなくなった。

ヒトラーは拳銃をUFOに預けてあるから見せて遣ると言い持ってきた。ソ連製を模造した大きな拳銃で銃身を少し長くすれば鉄砲としても使える代物だ。

UFOに保護され居心地が良かったヒトラー総統、立場は違うが気分は対等であった。

ヒトラーは惑星大統領の姿には成りたくないと言っていた。しかし、その姿でなければ超能力者の四倍の超々能力をもち負けることのない王の神であり君主である大統領には成れない。

第一次世界大戦の時の話をし「砲撃があるから移動しろ」とUFOから伝えられ移動して助かった。「そんなことは何回もあった」と言っていた。戦争中でも身の危険は必ずUFOから教えられ、その事だけは安心出来た戦場であったという。

UFOがテクノロジーを教えなかったから戦争に負けたと悔しそうだった。

「UFOを造った」と言い自慢し最初はプロペラ仕様で更に形だけ模擬したUFOを造ったがヒトラー総統は戦力にはならなかったと言っていた。そのUFOに機銃を取り付けUFOグレイに笑われたと言い「他に取り付ける攻撃兵器は開発していなかった」と悔しそうに怒っていた。
  
 
UFOとアメリカのセレモニー、後に映画化された『未知との遭遇』の時、UFOに保護されていたヒトラーはこの時健在なので何処かに居るだろうと探したが時間は余りなく大勢の中では見つけられなかった。後に日本の仲間がヒトラーはアメリカ人の中で隠れるようにしていたと言っていた。

UFOと他の惑星でのセレモニーにもヒトラーは来ており、ヒトラーも皆に紛れながら黙って寂しそうだから話しかけようとしたが〝自分が主役でなく面子も保てない、他の人間と同じ扱いで悔しい〟そんな寂しさからだろう、場所を変えられた。他の人間と同じ扱いが気に入らなのだ。

UFOグレイのに自分の考えや思ったことを見抜かれない為の〝思考換え〟については何回も話し「お前より早く気付いていた」と自慢していた。

『UFOはユダヤ人虐殺より酷い事をする』とヒトラーは言い、UFOが人間幼児を誘拐しミンチ状に潰して養分生産をするプロセスのことを批判していた。

UFOの惑星へ降りた時のこと、その日はヒトラーも惑星へ来ていてヒトラーを知っている日本人は近付かない。人間が檻の中にいるので無駄だと思いながらヒトラーに「地球人を助ける方法はないか」と聞いた処、ヒトラーもUFOや惑星ではただの地球人「殺されてしまう」と動揺していた。
   
 僕の『ヒトラーのプライドがズタズタになり可哀そうだ』との想いにUFOグレイは「総統の軍服を作る店を知っていたら教えろ」と云う。
「上諏訪の並木通りから国道へ出る左角に洋服屋(今はない)がある」と答えた。
 UFOはその店の主人をコントロールし総統の軍服を作らせ、グレイが軍服を見て来いと云うので店の中を覗くと派手さはないがヒトラー総統の軍服が掛けてある。
「一度ヒトラーの軍服を作りたかった」と、店の主人は言っていた。
 嬉しくて早速「総統の軍服が作ってあった」とグレイに話した処「総統の軍服を持ってくれば今着せ替えた」と言われたが遅かった。
 
 その後、UFOグレイからヒトラー総統の軍服を着替えさせたと聞き見る機会を待った。
 小型UFOが母船に入り早く見たいとグレイの許可を得ず早足で見に行き、容器の中に立つ〝ヒトラー総統仕様〟の軍服姿を見た。
 グレイから「勝手な行動をするな」と注意されたが大満足だ。
ヒトラーの遺体を地球人の誰が見ただろうか? UFO関連の記録は動画や画像は元よりメモでさえ禁止され、検査される場合もある。
 地球を混乱に陥れ、何千万人もの死者を出したUFO惑星と地球のヒトラー総統との因縁は遺体を残し終焉した。

アドルフ・ヒトラー総統の没年日
昭和51年(1976年)7月23日
享年八十九
   小松  雅 著  

 

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